BLUE DREAM

夢見がちな(現実逃避が得意な)女子大生のゆる〜い独り言。

【感想】 安部公房『誘惑者』

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今日は 安部公房の文庫本「無関係な死・時の崖」に掲載されている

短編小説『誘惑者』を読んでみました。

 

 

< 超ザッとしたあらすじ >                              

 

女2人が休んでいた駅の待合室に現れた大男。

夜になり、女たちや大男が眠っていると、今度はそこに1人の小男が現れる。

目を覚ました大男に小男が話しかける。

話の内容からして、どうやら2人は知り合いらしい。

小男の話によると、小男は大男に追われているのだそうな。

大男が小男の行動を予想して、この駅の待合室で待ち伏せしていたことに対し、

賞賛の声を送り、潔く自身の負けを認める小男。

そこからは2人の間で色々なやり取りや駆け引きが行われるのだが、

最後には何故か大男の方が捕まえられてしまう。

最後の最後で、追う者と追われる者の立場が逆転したのだ。

 

                                        

 

 

私、最後のシーンで「んっ???」ってなりました。

「これはどういうことだ?!」 と。

 

正しく理解できているかどうかについて自信はありませんが、

私なりの解釈と読み終えてからの感想を簡単に書き残しておきたいと思います。

 

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小男の話によると、大男はかなり凄腕の追跡者らしいですよね。

でも、その割には大男の発言が、

「い、言ってみろ!」だとか「そ、そうだな……」だとか、

何だか弱気だなぁ、威厳がないなぁ、と思ったんです。

まずそこで、何かおかしいなぁ、と。

 

また、よく読んでみると、2人の会話も全く成立していませんよね。

小男が大男の話を途中で遮っていたり、

大男の短い発言を小男が勝手に解釈して話を展開していったり……。

小男が一方的に大男を言いくるめているように思えます。

 

小男が話し過ぎてるぞ!!!

それでいいのか大男ォ!!!

 

最初は小男に不審な視線を投げかけていた読者も、

後半ではその視線を大男の方に向けたのではないでしょうか。

 

そして最後に捕らえられたのは小男ではなく大男。

大男を捕まえたのは白衣の男たち。

白衣ってことは、医療機関の方々でしょうか。

つまり、大男は病院的なところから逃げ出した

本物の気狂いだったってこと……?

小男は、大男を上手く言いくるめて、

その、病院的なところに連れ戻そうとしたのかな?

いやぁ…… 小男さん、お疲れ様でした。

 

そして、小男が最後に言い残した言葉。

 

「そう、すべて自由意志だと思い込ませることが、なんと言っても一番の

安全弁ですからね。」

 

知らず知らずのうちに、大男は小男に誘導されていたんですね。

それに気付かず、大男は、

"自分は自分の意思に基づいて行動している"と思い込んでいる。

小男の巧みな話術によって、大男は良い気になってしまったんです。

 

そういうことだと思い込んで読み返してみると……

なるほど、そんな気がしてきます。

実際はどうなのか、わかりませんが。

 

今回、私が この小説から学んだとことは、

全ての決定権が自分にあるからといって、

良い気になるのは危険であり、

実は何者かによって都合良く誘導されているだけなのかもしれない。

……ということ。

 

怖いですね。

小男に踊らされた大男になってしまわないよう、

私もアナタも、気を付けましょう。

 

 

 

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